腕時計は5時半を指していた。

門限は6時なので、そろそろ帰ろうと晴夏ちゃんを誘った。


安藤くんとお別れなのは名残惜しいけど、お母さんに怒られるのは御免。

あ安藤さんやカラクの皆さんにさようならを言って、夕日をバックにしている帰り道。



「安藤と話せたか?」

「うん!緊張したけど、前より喋れたよ」



そっか、と言って微笑する晴夏ちゃんは女の私から見ても惚れてしまいそう。


そんな晴夏ちゃんの隣で歩いている私は俯き加減になり、呟いた。



「私も晴夏ちゃんみたいな女の子だったらなあ」

「なんでだ?」

「だって晴夏ちゃん、めちゃくちゃ可愛いし男の子に負けないくらいカッコいいし。性格もサバサバしてて素敵だし、優しい彼氏もいて……。すごく憧れる」



晴夏ちゃんは自分が思っている以上に素敵。
クラスの子だって、皆怖がってはいるけれど、憧れてもいる。

私も晴夏ちゃんみたいだったら______



「安藤くんに、好きになってもらえるかも。とか思ってんの?」

「……えっ」



私の思考を読み取られて顔を上げる。

すると、晴夏ちゃんは微妙な顔をしていた。
怒っているような落胆したような。



「あっ、ごめん。そういう意味じゃなくて!」

「あー、うん。分かってる分かってる」



そう言って器用にガードレールの上に乗り、歩き出した。



さすがの運動神経だ。



「晴夏ちゃんのように素直で、前向きな子になりたいなって思ったの。私、いつもネガティブだし顔だって」