「あれ、剣道部のことも知ってんの?えー、それどこ情報?」



苦笑いで言う安藤さんに、内心しまった!と落ち込んだ。

もしかして、触れられたくない話題だったのだろうか。



「は、晴夏ちゃんから聞いて....」

「あー、晴夏さんか。そかそか、同じクラスって言ってたしね」



なんか、こんなときに晴夏ちゃんの名前出す私って嫌な女だろうか。

相手は触れられたくないことだったかもしれないのに。
それを、反論できない晴夏ちゃんのせいなんかにして....。



「あ、落ち込んでる!?え、違っ!別に俺嫌だったわけじゃないよ!」

「え.......」

「んとね、まあ、剣道部は中学校の頃やってただけで高校でもやろうとか、そんなことは思ってなかったから」



そ、そか。
嫌な話題じゃなかったのか.....。なら、良かった!



「サヤカちゃんは、なんで美術部なの?」



サヤカちゃん。
そう言われる度に鼓動が高まる。

田野倉さんや田野倉、ではなくて下の名前で呼ぶ男の子は安藤さんだけだ。

それに、好きな人から名前を呼ばれるって、すごく緊張するしちょっぴり嬉しい。
にやけてしまう。



「私は、絵を描くのが好きなんです。普通の理由ですけど....。上手い下手は別として、描くこと.....っていうか、色が好きで。模写も、普通ににするんじゃなくて色を変えてみたりするのが......」



と、そこまで語ってハッとした。

こんな話、面白いわけがない。
安藤さんはどちらかというとスポーツマンで、こんな文化系の話なんか興味あるはずがない。


そ、それに。


私ってお喋りな女だと思われたんじゃないのかな。


べらべらと、聞いてもないことを....みたいな。


後悔しながらも、隣に座っている安藤さんを見る。