目が合った安藤さんは、にこりと笑って、一緒にトランプをしていた友達にまた話しかけていた。


その後、手に持っていたトランプを地面に置き、お友達になにかを言ってこっちに歩み寄った。



「サヤカちゃん、だよね」

「あ、はい!」



はははは話かけてくれた.....!!


私より10cmは高い身長。
必然的に見上げる体勢になってしまう。



「俺らあんまり話したことないよね。ちょっと良い?」

「え、あ、もちろんです!」



じゃあ向こうで、と案内されたとこは車庫の隅(すみ)っこ。

壁に寄りかかりながら座る私の心臓は、もうバクバクで今にも破裂しそうだった。

あの安藤さんが話しかけてくれた!!


確かに、私は安藤さんのことが好きだけど、話したことはなかった。
「あ、ごめん」や「ありがとう」程度の会話なら片手で足りる程しただけ。



「サヤカちゃんも中2だよね、晴夏さんと同じで」

「はい!えっと....安藤さんは高校1年生でしたよね」

「おっ、よく知ってんね。そうだよ」



安藤さんのことは晴夏ちゃん経由で、まあまあ知っている。

そして安藤さんもまた、カラクの皆さんと同じく晴夏ちゃんのことを晴夏さんと呼ぶ。



「サヤカちゃんは何部なの?」

「わ、私は美術部です。安藤さん、は?」

「俺はねー、帰宅部」



にへー、と笑う安藤さんが可愛くて胸がキュンとなった。



「え、えと.....なんで剣道部やめちゃったんですか?」



赤く染まっているであろう顔を、ショートで切り揃えている後ろ髪と同じ長さの前髪で、安藤さんのほうから見えないように隠す。