「器は俺んがデカイ」
「じゃあ譲れ」
「それとこれとは別」
「器ちっせ」
「んだとっ」
てか、まだ髪が終わってないというこの事実ね。
どれだけ不器用な男なんだ....。
家庭科の成績1だろ、絶対。
「もう!桜餅くらいで....なんなら他のやつに買ってきてもらえばいいじゃん!」
「ダチを足にする気か!?」
「もうしてるよ!パシってるよ!三佐がその例だよ!」
涼を先頭に、カラクができているわけだが(実際は暴走族ではなく、ただの不良)。
そのカラクの誰かに頼めば桜餅の1つや2つ、ちょちょいのちょいじゃ!
「負けず嫌いも程々にしねえと、私に嫌われるぞ」
「むっ.......」
「可愛い彼女が譲れって言ってんだからさ」
でも、とかだって、とかブツブツ聞こえてくる。
後ろを振り向くことができないので表情は見えないが、拗ねてるに違いない。
自分で言うのもなんだけど、こいつ私に弱いよな。
若干呆れてしまうが、そこがまた涼の良いとこ。溺愛とか、束縛とか激しいのは好きじゃないけど、これくらいの可愛いヤツは好きだ。
子供っぽいもころが逆にツボる。
私は涼にバレないよう、フッと笑い、三佐からもらった桜餅を開ける。
「はい」
「.......んだよ」
「1つあげるよ」
「........ 」
お前が食べろよ、とかは言わないんだ?
「いらないのー?」
「..................................いる」
あー、可愛い奴。
「けどこれが終わってからな」
そう言って私の髪と格闘を再開した。
なんと表現すればいいのか....。うん、あれだ。
桜餅食べてもいいかな?
「(俺、帰っていいスよね)」



