「………い…ない」
そんなばかな?
たった今、私の横を通り過ぎたばかりじゃない。
それなのにもう姿が見えないなんて、そんなの人間業じゃない。
一条製薬から出てきたところを見た事があると言っていた、蓮の言葉を思い出した。
もしかして京極さんは---
そして…、
京極さんの香りなんて嗅いだ事なんてあるはずないのに、凄く気になったのは一体どうしてなんだろう?
妙に心地よく感じる、京極さんのにおい…。
飛翔を撫でながら、ただジッと暗闇に続く道を見ていた。
いつしかその香りは、暗闇の中へと溶け込んでいく。