「んー…」
「良牙の名前を言ってたけど、なんかあった?」
何て言おうか迷っていると朱里が、目下悩み中である私の弟の名前を口にした。
その名に、ドキンと胸が鳴る。
私の独り言が聞こえてたの?
顔が赤くなるのを感じながら朱里を見上げると、その横からヒョイッと顔を覗かせてきた青治が口を開いた。
「何?兄弟げんかでもしちゃった?」
そう言われてはたと気付く。
あれ?
別に良牙とはケンカをしたわけではないけど、それより…
私と良牙ってまだ、ケンカをした事なんてないなぁ。
口の悪い良牙とはケンカをしそうなものだけど…、どうしてかそんな良牙を当たり前のように私は受け入れている。
まぁ、本気で言っているわけではないのを知っているし、口の悪さがなくなったら良牙じゃないもんね。



