紅Ⅱ(クレナイ)~解き放たれる鎖~



「んー…」


「良牙の名前を言ってたけど、なんかあった?」



何て言おうか迷っていると朱里が、目下悩み中である私の弟の名前を口にした。





その名に、ドキンと胸が鳴る。


私の独り言が聞こえてたの?




顔が赤くなるのを感じながら朱里を見上げると、その横からヒョイッと顔を覗かせてきた青治が口を開いた。




「何?兄弟げんかでもしちゃった?」



そう言われてはたと気付く。



あれ?


別に良牙とはケンカをしたわけではないけど、それより…




私と良牙ってまだ、ケンカをした事なんてないなぁ。




口の悪い良牙とはケンカをしそうなものだけど…、どうしてかそんな良牙を当たり前のように私は受け入れている。


まぁ、本気で言っているわけではないのを知っているし、口の悪さがなくなったら良牙じゃないもんね。