紅Ⅱ(クレナイ)~解き放たれる鎖~



そう…、


良牙自らが、親友に手にかける事となってしまったあの時の場面だ。




あの時、良牙はどんなに辛かっただろう…。


涙ながら峰岸さんを抱きしめる良牙を思い出し、チクリと胸が痛んだ。





あれから三ヶ月たった今もなお良牙が苦しんでいると言う事を、ずっと傍らにいた私だけが知っている。




一体、いつまで良牙はこうして苦しまなければいけないの?


あの研究所の全てを、根絶やしにしたら?





…ううん。


それでも良牙の苦しみはきっと、いつまでも癒えやしない。




蓮の父親である一条宗史があんな研究をしなければ…、ってこんな事は今更………か。





いつか…、


いつか良牙のその苦しみが、少しでも癒えますように。



そう願い良牙を見つめながら歩いていると、視線だけ私に寄こすその男と目がかち合った。