そう…、
良牙自らが、親友に手にかける事となってしまったあの時の場面だ。
あの時、良牙はどんなに辛かっただろう…。
涙ながら峰岸さんを抱きしめる良牙を思い出し、チクリと胸が痛んだ。
あれから三ヶ月たった今もなお良牙が苦しんでいると言う事を、ずっと傍らにいた私だけが知っている。
一体、いつまで良牙はこうして苦しまなければいけないの?
あの研究所の全てを、根絶やしにしたら?
…ううん。
それでも良牙の苦しみはきっと、いつまでも癒えやしない。
蓮の父親である一条宗史があんな研究をしなければ…、ってこんな事は今更………か。
いつか…、
いつか良牙のその苦しみが、少しでも癒えますように。
そう願い良牙を見つめながら歩いていると、視線だけ私に寄こすその男と目がかち合った。



