ざわめく教室の中に入ると、窓際の一番後ろにある私の席の隣に座っている男がすぐ目に付いた。
足を机の上に上げ窓から見える景色をボンヤリと眺めながら、自分の耳についているエメラルドのピアスをソッと撫で上げているこの男は私の弟、九門 良牙だ。
三ヶ月ほど前に私の弟だと言う事が分かった、出来たてホヤホヤ双子の弟である。
我が弟ながらつり目のこの男は、惚れ惚れする程かっこいい…と思う。
黒髪に所々入っている銀色が太陽に当たりキラキラ光る良牙の周りでは、クラスにいる女子の一部が良牙を見て顔を赤くしながらひそひそと話しているのが見えた。
太陽の光に反射してキラキラ光っているのは、銀髪だけではない。
まるでその石が生きているとでも主張しているかのように良牙の耳につけている、緑色の輝きを放つピアス。
亡き峰岸 章平に誓いを立てているかのように、峰岸さんのピアスを亡くなってからずっとつけている。
良牙は自分の耳につけているそのピアスを、たまに指先でソッと触れているのは無意識なのか?
それとも、峰岸さんを思い出しているからなのか?
愛しむようにピアスを弄る良牙を見ていると、あの時の峰岸さんの最期が脳裏に思い浮かんでくる。



