それから私の教室まで送ってくれた蓮は私に何も言わず、そのまま去って行った。
そんな蓮を傍にいた生徒達は驚いた顔をしたがもすぐに、モーセの十戒のように左右に分かれていく。
その中を、悠々と歩いていく蓮の後姿を見送った。
「京極 雅斗。それに転入生………、か………」
蓮の小さくなってゆく背を見ながら、呟いた---
これから…、
何かが起こるのだろうか?
一抹の不安にギュッと瞳を瞑る。
………でも、何があろうとも大丈夫。
私は一人じゃない。
私には蓮がいる。
それに弟の良牙や、生徒会の皆だって…。
何かあれば、私が皆を守る。
絶対に…、
何があろうとも---
だから私は怖がることなく、ただ前を向いて歩けばいい。
まるで自分に言い聞かせるように心の中で呟き、そしてざわめく朝の教室の中へと入っていった。



