「他の理由って何?」
「アイツは京極組組長の長男。生まれてからずっと極道育ちとあって、軽そうに見えて実は極悪非道な男だ」
「…そんな風には見えなかったけど」
「だからなるべく…、イヤ絶対に近づくな。それに何故、アイツが一条製薬をうろついていたのかも気になるしな」
組長の息子…。
関西弁で軽薄そうな物言いだったにも関わらず、どこかほの暗い部分も見え隠れしていて瞳の奥底が妙に冷たいのが印象的だったのを思い出す。
まぁ、蓮に言われなくてもあの男に好き好んで近づきたくなどない。
でも…、
京極さんがさっき私にこっそり耳打ちした話しが気になって、会いに行こうか考えてしまった。
ううん、止めておこう。
やっぱりあの男に聞いてまで、知りたくはない。



