「以前、…一年ほど前だが一度だけ京極を一条製薬の本社で見かけた事があるんだ」
「一条製薬で?…じゃぁ、あの人も私達と何か関係があるの?」
「それは分からない…。だがアイツからは、得体の知れない何かを感じる」
蓮もそう思ったんだ?
それに…、
私が京極さんの動きが読めなかったって事は、やっぱり私達のように獣の遺伝子が体内にあるかもしれないと私はそう思っている。
「まぁ、軽率に考えるな。…ただアイツに気をつけなくちゃいけない理由は他にもあるんだ」
漆黒に戻った瞳が、静かに私をジッと見つめる。
蓮の黄金に輝く瞳も綺麗だけど…、
今、目の前にある透き通る程の黒い瞳にも吸い込まれてしまいそうだ。
でも今は、蓮と話しをしているのだから見惚れている場合ではない…。
そう思い直し、心の中で首を振る。



