「なんでアイツに…、京極にキスさせた?」
静かな口調で蓮にそう問われて、少しだけ目を瞬いた。
あれ?
あの時、キスをされたのは無理やりだったという事は蓮も知ってるよね?
「好きでしたわけじゃないよ。分かってるでしょ?」
「…それでもだ。とにかくこれからアイツ…、京極には気をつけるんだ。いいな?」
「うん…」
私から視線を逸らし、唇を少し尖らせる蓮に可愛いなと思ってしまう。
うん、まぁその態度で、嫉妬をされているのだと言う事は分かった。
でもね…、
言いわけがましいかもしれないけど京極さんにキスをされてしまったのは、考えるひまもないくらい京極さんの動きを感じる事が出来なかったからなんだよ?
そして私は京極さんから逃げる間もなくあの時、捕らわれてしまった。
本当に不思議なくらい、スルリ…といつの間にか頬にキスをされていたのだ。
獣の遺伝子を投与された私は人より機敏に動けるし、それに相手が普通の人間だったならばすんなりかわせるはず…。
それなのにあの時、京極さんの動きがまるで読めなかったのは今更ながらに絶対おかしいと思っている。
一体、どうして?



