「蓮!」
「………」
また、近づいてくる蓮に瞬間、黒い瞳の獣が頭の中を過ぎる。
その映像に思わず息を呑んだ私は、蓮の胸をそのまま押してしまった。
金色の瞳が、驚きに大きく見開く。
私を見据えていた金の瞳が、すぐに自分を抑えるかのようにゆっくりと閉じられていった。
ふぅ…、
目の前で呼吸を整えるように深く息をはき、そして徐々に瞳を開けていく蓮。
先程までの鮮やかな金色の瞳がいつの間にか成りを潜め、黒い瞳に変化を遂げていた。
静かに漆黒の瞳へと戻ったその瞳は私を捕らえ、何か言いたげに揺れる。
多分、キスを止めた事が気になっているのだろう…。
「えっと…、そろそろ朝のHL始まるよ?」
本当はさっきチラついた残像に心が揺れ身体が動いてしまったのだけれど…、
それを言ってしまうと今やっと落ち着いた蓮との関係が崩れてしまうような気がして、怖くて言えなかった。
別に…、
あの人とはなんでもないのに---



