「行くぞ、綾香」
「う、うん」
私の腰に手を回した蓮が、私に歩くよう促す。
京極さんの脇を通り抜けた私達は、階段をゆっくり下りていった。
京極さんからは、動く気配が全くない。
気になった私は思わず、チラッと後ろを振り返ってみた。
こちらをジッと見ていた京極さんと、バッチリ目が合い目を瞬いた。
ずっと…、
私達を見ていたの?
どこか楽しげに、私達を見ている京極さん。
「あぁ、せやせや。言い忘れとったわカイチョーさん」
「………」
何も言わずに無言で振り返る蓮を見ながら、もう一度京極さんを見た。
その顔はやはり先程同様、面白そうに笑みを浮かべている。
…ううん、違う。
何かを含んだような、そんな笑みを浮かべていたのだ。
一体…、
何を考えているのだろうか?
まるでこれから何かが起こると言うような…、
それが楽しくてしかたがないと言う笑みに、嫌な予感がしてゴクンと喉を鳴らした。



