紅Ⅱ(クレナイ)~解き放たれる鎖~



「あーやかちゃん、何を思い出したらいけないんや?」



二階の階段に足を一段下りたところで、人の気配が全く感じられなかった階下から声をかけられた。


その声にピクリと肩が揺れ、私の足は立ち止まる。




視線をその声の主に向けると、ヘラヘラ笑みを見せながらゆったりと階段を上って来る人物が目に付いた。




誰?


見た事がない---




表情は笑っているのに目の奥は酷く冷たくて、身体が一気に総毛立つ。



短髪に少しばかり青メッシュが入っていて、耳には計五個のピアスがついている。


ガッシリとした体付きに、厳つい顔立ち。




人当たりのよい笑顔を見せているのに全然マッチしていない表情が、申し訳ないけど私的に受け付けない。



瞳を細めながら笑いかけてくるこの男は、今だ私をジッと捉え足を縫いとめる。




「何やその顔。俺の事、知りまへんって顔をしとるな」


「………」



笑みを今だ引っ込めないその男は首を傾け、私のいる段の二つ下で止まった。