「瀬谷…君?」
「………」
声をかけても…、振り向かない瀬谷君。
何でこんな所でジッと佇んでいるの?
聞きたかったけどこんな雰囲気の瀬谷君からは、絶対に教えてくれないだろと踏んだ私はすぐに瀬谷君から視線を外す。
そして何も話す事なく瀬谷君の横を通り過ぎる事を選んだ。
良牙の気配が上から感じ、顔を上げた。
きっと…、
この階段を上がったところに良牙はいるはずだ。
だって良牙の気が上から感じるから---
たしかこの上にあるのは、特別棟の屋上。
そしてそこから感じる気は、良牙以外にもあった。
急いで行った方がいいかもしれない---
そう思った私は急いで階段を登ろうと足を動かした。
「………な」
「え?」
声が聞こえ結局、足を動かす事なく声のした方へと顔を向けた。
そこには今だ、私へ顔どころか視線さえ向けない瀬谷君がいた。
その瀬谷君が、ゆっくりと前髪を掴んでいた手を下ろす。
そして…、
長い前髪がサラリと揺れ落ちた。



