「恢…、ありがとう。もう大丈夫だよ」


「………そうか」



私の身体をソッと離した恢は、ジッと私を伺い見る。



まるで私の言葉が、真実かどうかを探っているように---


でもすぐに安心した表情へと変った。




そんな様子にちょっとテレくさく感じた私は、恢を見ているのが恥ずかしくなって視界からソッと外した。



そしてそう言えば…、と思い出し後ろを向く。




「良牙…、どうしてここに?」


「………偶然だ」



少しバツの悪そうな顔をしながら、私から顔を逸らす。




何かあったのかな?


不思議に思ったけど、良牙は言いたい事があれば言ってくる。


でも今は何も言わないから、それは言いたくないのだとすぐに分かった---




だから私は気にしない素振りをして、言葉を続けた。




「帰ろっか」


「………あぁ」


いつの間に落としてしまった傘を拾い上げ、良牙を傘へと入れる。


こんな雨の中、傘もささずに町を歩く良牙に不思議に思ったけど、それは聞かないでおこう。




良牙を見ると驚いた表情を私に見せる。


そしてすぐに眉を寄せた。




そんな良牙に、思わず笑ってしまった。