お店の前に置いていた自分の赤い傘を広げて、その場でジッと待つ。
私より恢の方が先にお店前で待ってくれているのかと思ったのに、まだ来ていない。
あれ?
ここで待っていればいいんだよね?
結局、恢に対する自分の気持ちがいまいちよく分からなかったな…と思っていると、ガチャっと少し離れたところから扉の開く音が聞こえてきた。
店の角まで行き、裏道へと視線を向ける。
ビニール傘を広げてから歩き始めたその人はやはり…と言うか、恢だった。
「あれ?お店のエプロンは脱いだの?」
「あぁ。この変装が一条製薬にばれた時にあの店の名前が入ってるエプロンなんてしてたら、店に迷惑がかかるからな」
「そうだね」
恢って以外と気つかい屋さんなんだね。
変装…と言ってもそれ程、恢って分かりにくい分けではないそれは、どこか大人な雰囲気だ。
きっと傍目からは私と恢との関係性は恋人同士には見えない、兄と妹………の関係に見えるのだろう。
佇んでいる私の横へと並びそのままゆっくり通り過ぎたから、私も急いで恢の横へと並ぶべく歩く。



