「恢?」
「気をつけて帰れ」
「あら、送って上げないの?」
恢の言葉にすかさず月夜さんが言う。
「大丈夫です。私、結構強いんですよ」
「でも、女の子なんだし」
「…綾香、行くぞ。店の前で待っていろ」
そう言った恢は裏口へと引っ込んだ。
カランカラン---
恢がいなくなったと同時に、一組のカップルがこの店へと入って来た。
月夜さんはお水を持ってそのお客様に向かう為に歩き出す。私とすれ違いざま、気をつけてと言いながら通り過ぎた。
そんな月夜さんの背にペコッと頭を下げてから、学校指定用カバンを手にし歩き出す。
カランカラン---
心地よいドアベルの音を後に、店から出た。



