「あの…、前にこの辺りで恢を見かけた事があったのでここらへんにいるのかな?とは思ってたんですけど………、今日はたまたま恢がこの店から出てくるのを見かけて押しかけてしまいました」
「ふーん、そうなんだ」
コクコクと頷きながら、生クリーム入りのコーヒーをまた一口飲んだ。
あ…、やっぱり美味しい---
「恢…はどうして月夜さんの店で働いているの?」
「あぁ…。この店の壁にずっと寄りかかってぼんやりしてたら、月夜さんが声をかけてくれたんだ」
「うん」
「行くところがないって言ったら、住み込みでここで働かせてくれる事になった」
「………」
行くところがない…
学園の寮に住んでいた恢がそこから出てしまったら、必然と行く場所がなくなってしまうのは当たり前だもんね。
それは…
月夜さんの前で言う事じゃないから…と、口を噤んだ。



