紅Ⅱ(クレナイ)~解き放たれる鎖~



恢と対峙していた場所から右に曲がったすぐの扉の前で、私は立ち止まった。


他の店に比べて外観が黒色だからか、目立つように感じる重厚で濃密な店の佇まい。


視線を上げればレトロでどこかオシャレな看板が目を引く『珈琲茶館 月輝』。



その店の前にある傘立てに傘を置き、ハンカチを出して雨に濡れた顔や髪を拭いた。




まぁ、それほど濡れていないみたい。


良かった…




そして目の前の扉を少し、緊張しながら開けた。




--カランカラン--




小気味良い音…より少しばかり重い鐘の音と共に、コーヒーの香りが私を迎えてくれた。