「…綾香」
「………ッ」
頭の上から名前を呼ばれ、おそるおそる…と言う感じで恢を見ると---
髪の毛から滴り落ちる水を気にもせず、優しげに微笑む恢がそこにいた。
ポタッ---
滴り落ちてきたその水が、雨と一緒に私の頬を伝う。
こんな………、表情を学園にいた時に見た事があっただろうか?
いつも極悪な笑みを浮かべ……ってこれは酷い言い方だけどでも、意地悪な表情を浮かべる事の多かった恢はこんなに柔らかな感情を表に出す人物だったっけ?
「どうした?…そんなに俺に会いたかったか」
「………」
ドキン---
その言葉に胸が一つ、大きく鳴った。



