だめッ!逃げなくちゃっ!!
目を見開き恢から逃げようとしたところで、あれ?と気付いた。
目の前にいる恢は私の唇に触れる間際まで来ているのにそれ以上動こうとはせず、まるで私を観察でもするかのようにジッと見ているのだ。
「はッ?」
「なんだ?本当にキスをすると思ったか?」
クツクツと笑いは始めた恢に一瞬驚き、そして睨みつけた。
「からかったの?サイテーッ」
「………」
怒る私をまるで愛しい者でも見るかのように切なげな顔を見せたのは…、気のせいなのだろうか?
多分、気のせいだよね?
すぐに私をからかうような目で見てきたから---
でもその一瞬垣間見せたその表情に、胸がズキンと痛んだ。
私はもう、恢の顔をまともに見る事が出来なくて下を向いてしまった。



