「ねぇ、ありたん?」

今は電車の中。

「何?」

あたしは片方の耳にイヤフォンをはめ、本から顔を上げる。

最近ハマってる…電車での過ごし方。

…でも、空流は好まないようで…。

「俺のこと……好きぃ?」

最近、空流が聞くのはそればかり。

「うん。そーだよ?」

あたしは恥ずかしくなって、本に視線をずらす。

「…ありたん?」

「何?」

あたしはまた本から顔を上げる。

全く読めてないけど…。

空流は付き合ってからと言うもの…。

凄く甘い。

なんて言うの?

友達の時は全然なのに…、彼女になれば…特別扱い。

『有空』

と呼ばれていたのが、

『ありたん』

になったり…。

「俺、ありたんのこと……特別扱いして…もっと可愛がりたい」

真っ赤な顔であたしを抱き締める空流。

「…うん」

あたしは間違いなくSかもしれない。

…悪魔と言った方が近いのかな?

あたしは毎回コレを聞きたくて、イヤフォンをはめ、本を読む。

あたしは本とイヤフォンを鞄に閉まって…、ゆっくりと手を空流の背中に回す。

「…ありたん、ありたん!」

あたしをぎゅっと抱き締めてくれるこの腕があたしの物であると思うと…幸せ。

「なぁに?」

あたしは空流の可愛い次の言葉を待つ。




「ありたん、俺…欲情…してる」




「…え?」

あたしは驚きで、空流をガン見。

「お、俺だって男だよ?…が、我慢してんの…」

恥ずかしそうにあたしを抱き締めてる。

いつもならさ?

『有空、俺…有空居なくなったら死んじゃうかも…』

って、言うじゃん?

予想外の言葉に、あたしは目が点。

「…俺のこと、嫌いになった?」

「い、いやっ…滅相もございませ、せん」

あたしは目線をどこに向けて良いのか…、悩むに悩む。

「発情しちゃ…イヤ?」

潤んだ瞳であたしを下から見つめる空流。




「あたしも…、そんな顔されたら、発情しちゃうじゃん?」





あたしの顔は真っ赤に染まってるんだろうなぁ…なんて頭では呑気に考えている。

空流はあたしの言葉に…、優しく微笑んだ。

「…発情しちゃうお年頃だから…、俺んち如何ですか?…発情お姫様」

「…いーよ。今ここで食べてくれても…」

あたしだって言われっぱなしは嫌だからね!

ついつい意地悪したくなる。

案の定、空流の顔は赤く染まる。

そして、空流は真面目な顔して…、あたしを横に押し倒した。

驚きと空流の真剣さに、真っ赤になる。

空流は耳元に顔を寄せて…、

「有空…あの顔…、男の前ですんなよ?」

「えっ!?」

「有空の可愛い顔を見られたくないから…」

ニヤリと笑って、あたしに顔を寄せる空流。

それは、まさに確信犯で…。

「有空のあんな顔みたら、世の中の男、みんな欲情しちゃうぞ?」

目が合って、空流は微笑んだ。




とびっきり甘い甘い声で……、




「だからさ?………俺の前だけにして」





あたしは何故か一生空流には敵わないきがした。

「…出来たらねっ」

赤くなる頬を隠して、そっぽをむくあたしに、

空流は満足気に微笑んだ。



*:.。..。.:*・有空サイドend・*:.。. .。.:*