「……何、アレ」
ムスッとした表情のまま、瀬戸は水谷君が去っていった方を睨みつける。
「何って……」
瀬戸はあたしへと視線を移すと、口を尖らせたまま今度はあたしに向けて口を開く。
「てか、平野も隙ありすぎ。
何であんな簡単に触られてんの」
「せ、瀬戸?」
「やっと見つけたと思ったら何か絡まれてるし」
あたしの手首を掴む瀬戸の力が少しだけ強くなった気がした。
瀬戸の顔を見れば、視線をまっすぐあたしに向けていて。
でも、どこか不安げなその表情に胸がキュッとなる。
「……彼氏でもないし。
俺にこんなこと言う権利ないの分かってるんだけどさ……」
そこまで言って、瀬戸の口の動きが止まる。
何か言いたげな様子だけども、そのまま口をつぐむ。
「瀬戸?」
あたしが名前を呼ぶと、瀬戸は覚悟を決めたように声を発する。
「……俺のこと、見てよ」
っ………………。
切なげな表情で瀬戸がそんなことを言うから。
……あたしの胸は落ち着かない。
いつも……いつも乱される。

