その瞬間、笑っていた広里君の表情が一瞬で真顔になった。

ピシッという音が聞こえそうなぐらい固まる広里君。

あの時の瀬戸と似たような状況にあたしは少し戸惑った。


「広里君……?」

「平野、それどこまで知ってるの?」


さっきまでとは違い、真剣な表情の広里君。


「どこまでって……そういうことがあったよっていうことぐらいしか」

「その付きまとってたのが誰かって知ってるの?」

「知らないけど……」


そう言うと、心なしか広里君が少し安心したように見えた。


「広里君は……知ってるの?
誰か……」

「………………。
……涼には聞いたの?このこと」

「え、あ、うん。
なんかはぐらかされちゃったけど」

「じゃあ、俺もそうしとくわ。
平野には話すべきことじゃないのかもしれない」


広里君……?


打って変わった態度に戸惑うあたしを見て、広里君は小さく笑った。


「大丈夫。
平野は涼のこと信じてれば、何の問題もない」


その言葉の意味が分からなくて首を傾げたけど、広里君はそれ以上は何も答えてくれなかった。