結局、あれからもそのことについては瀬戸に聞けなかった。
瀬戸に聞けないまま、気がつけば夏休みがもうすぐそばまで近づいていた。
夏休みの予定を立てている声があちらこちらから聞こえてくる。
夏休み……か。
「海とか行きたいね!」
結衣が楽しそうに提案してくる。
「海かぁ……この辺りだとどこが近いのかな」
「家帰ったら調べてみるよ」
遊ぶことが大好きな結衣はこういう計画には割と前向き。
瀬戸のことはもう吹っ切れたのかな……。
楽しそうな結衣の顔を見ながらぼんやりとそんなことを考える。
もう結衣には瀬戸のことは聞かないけど。
忘れようとしてるなら名前は出してほしくないだろうし、出したところであたしもどんな顔をしていいか分からないから。