頭の中がグルグルしている。
いろんなことがグルグル。
「頭痛くなりそ……」
結衣がもし瀬戸のことを知ってしまったら……。
そしたらどうなるんだろう。
何だか怖くてその先が想像できない。
「恋愛って恐ろしい…」
ため息をつきながらそう呟いた瞬間、あたしの前を歩いていた人からヒラリと何かが舞い落ちた。
あれ……ハンカチ?
あたしは少し早足で進み、落ちたハンカチを拾い上げて前を歩いていたお姉さんに声をかける。
「あの!」
あたしが声をかけると、お姉さんは不思議そうな顔をしながら振り返る。
「はい?」
「ハンカチ、落としましたよ」
あたしがそう言うと、お姉さんは慌ててカバンの中を確認する。
そしてカバンの中にハンカチがないことが分かると、あたしの手にあるハンカチを見て安心したように笑った。
「ありがとう」
……初対面のはずなのに、お姉さんのその笑顔に何だか見覚えがある気がした。

