「水谷君……?」

「分かったよ、平野の言いたいことは」


騒いでいた瀬戸も口をつぐむ。

あたしと瀬戸は柔らかく笑う水谷君へと視線を向ける。


「俺はフラれたってわけだ」

「……ごめんなさい」

「平野が謝ることじゃないよ。
……でもさ、」

「ん?」

「俺にもアタックするチャンスちょうだい。
瀬戸みたいに」

「え……でも……」


そんな提案に戸惑う。

別に瀬戸にアタックするチャンスを与えたつもりはない。

ただ、瀬戸に返事を言わせてもらえなくて。

そのままズルズルと続いてるだけで……。

こんなの、よくないって……分かってるけど。

瀬戸にはっきり言えない。

言うことができない。


「諦め悪いぞ、水田クン!」

「瀬戸にだけは言われたくない」


うっと瀬戸は言葉を詰まらせる。


「水谷君、あの……」

「平野が申し訳なく思うようなことは何もないよ。
ただ、往生際の悪い男が勝手に言い寄ってるってだけで。ね?」

「でも……」

「じゃあ、俺はそろそろ行かなきゃ。
一時間目の宿題、まだ終わってなくてさ」


そう言うと、水谷君はあたし達に背を向けて歩き出す。

えっ……ちょっ……


「水谷君!?」