教室を出ると、瀬戸はどんどん歩いていく。

あたしはその後ろを少し早足になりながらついていく。


「ちょっ……瀬戸!
歩くの速い……」

「え?
あ、あぁ……ごめんごめん。
なーんか緊張しちゃってさー」

「緊張?何で?」


疑問に思ったことを素直に聞くと、瀬戸は柔らかに微笑んだ。


「だって、平野……じゃなくて、つぐみちゃんが」

「何で言い直したし」

「まぁまぁ、細かいことは気にしないで。
とにかく、つぐみんと2人きりだーって思うと何か緊張しちゃってさー」


つぐみんって何だよ。

だったらまだちゃん付けの方がマシだし。


ていうか……


「え?
それ、どういう意味?」

「ははっ、あんま気にしないで。
それで?
平野……じゃなくて、つぐみちゃんの用って何?」


だから言い直さなくていいのに……。

そんなことを思いながら、あたしは辺りを見回して人がいないことを確認する。

そして教室を出る直前にブレザーのポケットに入れてきた結衣から預かったラブレターを取り出した。