水谷君が出て行ってしまい、瀬戸と二人になった教室。

瀬戸は悪びれた様子もなくニコニコとしている。


「ちょっと、瀬戸。
何でここに……」

「何でって、俺も読んだからね、あれ。
あれを見て放っておくわけないでしょー」


そう言って瀬戸はヘラヘラと笑う。


「俺だってずっとスタンバってたんだよ。
いつ邪魔してやろうかなーって様子を窺いながら」


邪魔って……。

あのねぇ……。


すると、突然瀬戸は真剣な顔であたしを見た。


「もしかして……本当に邪魔した?
平野、アイツのこと……」

「え……ち、違うけど。
水谷君のことは何も……」


だって、あんまり接点なかったし……。

好きになるほど水谷君のこと知らないから……。


……って、また呼び方変わった。

瀬戸の顔を見れば瀬戸はクラスでは見れない真剣な顔をしている。

あの告白以来、あたしの前で見せることが多くなったこの真剣な顔。


「……瀬戸ってさ、」

「え?」

「瀬戸って時々あたしの呼び方変わるよね」


あたしがそう言うと、瀬戸は不思議そうな顔をしながら首を傾げた。