本当に一瞬だった。

顔を上げたあたしの目に映ったのは。


1メートルあるかないかの扉の長さの分だけ見える廊下を行き交う人々の様子。


そこを通った一組のカップル。


なんてことない、よく見る風景。


……だけど。


「……つぐみ?」


亜美が心配そうにあたしの顔を覗き込む。


……見てしまった。

……初めて見た。

あんな幸せそうに笑ってる顔。


ソフトクリームを持って楽しそうに笑う結衣。

そんな結衣を愛しそうに幸せな笑顔を浮かべながら見つめる……瀬戸。


……なんでこんなタイミングで視界に入ってくるの。


最後に告白しよう。

そう、決心したばかりだったのに。


あんな幸せそうな顔を見てしまったら……


「もう……言えないよ……」