結局、薄情にも広里君はあたしを置いて教室を出ていく。
残されたあたしと瀬戸。
静まり返った空間。
やっぱり、何かちょっと気まずい。
「………………」
瀬戸は黙ったままなぜかあたしの方を見てくる。
そんな瀬戸の視線に耐えきれず、あたしはとうとう瀬戸に向けて声を発する。
「忘れ物、取りにきたんじゃないの?」
あたしがそう言えば、瀬戸は少しだけ驚いた表情を見せた後にヘラッと笑う。
「あー、うん。そうだった」
そう言いながら机の上に置いてあるカバンの元まで歩いていく瀬戸。
瀬戸の視線から逃れられたことに少しホッとする。
ホッとしたら何かお腹空いてきた。
さっきまで食欲なかったのに。
やっぱり何か少しでもお腹に入れておけばよかったかな。
なんて呑気に考えていると、瀬戸がカバンを漁っていた手を止めて振り返ってまたあたしを見る。
「つぐみちゃんさー」
久々に瀬戸の口から紡がれた名前に胸がドキッとする。

