「ふーん……」


面白くなさそうにこっちを見てくる瀬戸。

そんな瀬戸を見ながら広里君はゆっくり立ち上がった。


「広里君?」

「ちょっとトイレ行ってくる」

「え、」


……え、ちょっと待って。

出ていかないでよ。

ここで広里君が出ていっちゃったら、瀬戸と二人になっちゃうじゃん。


そんなの……あたしが持たない。


そう思ったあたしはガシッと広里君の腕を掴んでそれを阻止する。


「何だよ」

「お願いだから置いていかないで」

「いや、だからトイレ行きたいんだって」

「もうちょっと我慢できるでしょ」

「ムリだから、離して」


広里君は無理矢理あたしを引き剥がそうとするけれど、あたしだって負けられない。

だって、今のあたしには瀬戸と二人きりなんて状況はとても耐えられそうにない。


チラッと横目で瀬戸を見れば、まだ突っ立ってあたし達の方をじっと見ている。


忘れ物取りに来たなら、早く探して出ていけばいいのに!


心の中でそう叫ぶけど、瀬戸には当然伝わるはずもなくピクリともしない。