入ってきた人物を見てあたしは思わず目を見開く。
広里君も同じだったようで、目をパチクリさせてから口を開いた。
「お前、外に食いに行ったんじゃなかったの?高橋と」
広里君がそう問いかけるも、教室に入ってきた瀬戸はムッとした顔をして軽く広里君を睨む。
……珍しい。
瀬戸がこんな顔するなんて。
「……忘れ物」
「ふーん、そっか」
軽く返事をする広里君に納得いかなそうな表情の瀬戸。
何だかちょっと機嫌の悪そうな瀬戸を物珍しげにじっと見ていると、パチッと瀬戸と目が合った。
あたしは慌てて目をそらす。
少しだけ胸がドキッとする。
……まだこんな風になるなんて。
もう忘れなきゃいけないのに。
瀬戸へのこの気持ちはなかなかなくなってくれない。
「……二人で何してるの?」
「何って、話してるだけ。
他はみんな外行っちゃったみたいだし」
な?と広里君が同意を求めてきたから、あたしは素直に頷く。

