「平野」


亜美と二人で話していると、突然名前を呼ばれる。

声がかけられた方を見ると、久々に見る姿。


「水谷君?」


水谷君は片手を挙げて微笑む。

すると、亜美はそんな水谷君を見て急にわざとらしく手を叩いた。


「あー、あたしそういえば次移動教室だったわ。
つぐみ、また後でね」

「あ、うん」


最後にパチリとウインクをして去っていく亜美。

そんな亜美を見て水谷君は申し訳なさそうに口を開く。


「ごめん、邪魔したみたいで」

「ううん、全然大丈夫だよ」


水谷君はさっきまで亜美がいた位置、あたしの隣に立つ。


「あの、さ……」

「ん?」


口を開いたり閉じたり……何か言いたげな水谷君。


「どうしたの?」


あたしがそう聞けば、水谷君は何か決心したように小さく頷いてから口を開いた。