あたしは驚いた顔を隠そうと必死で笑顔を作る。
「そんなの……噂でしょ?」
よくあること。
それに、昨日まで何もなかったのに。
急にそんなことになるなんておかしい。
噂。
噂好きな人たちが流したデマに違いない。
「まぁ、それはあるかもしれないけど……。
でも、噂の出所が出所だしさ……」
「出所?」
「瀬戸と付き合うことになったっていう張本人から聞いたんだって!!」
「え……」
「誰なのかまでは分からないけど……。
……でも、瀬戸ってつぐみに猛アピールしてたみたいだし。
やっぱりただの噂……?
けど……」
ブツブツと呟く亜美。
あたしはなるべく平静を装うと軽く深呼吸をする。
「噂だよ、そんなの。
突然すぎるでしょ」
「そう……だよね。
ごめん、つぐみ」
「何で謝るの。
いいよ、別に」
あたしは笑いながら床に落としたローファーを拾い上げた。

