好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―


二人並んで教室へと戻る。

瀬戸の腕にはペットボトルが抱えられていて。

捲りあげたワイシャツから伸びている腕が水滴で濡れている。


筋肉ムキムキなわけじゃないけど、女子のあたしなんかよりよっぽどしっかりしているたくましい腕。

女の子にはなかなか出ない筋に少し目を引かれる。


「ん?」


瀬戸の腕を見すぎたせいか、瀬戸が不思議そうに首を傾げる。


「な、何でもない」


慌てて視線をそらすあたし。

明らかに不自然だけど、瀬戸はそれ以上何もそのことには触れてこなかった。


「そういえばさー、つぐみちゃん。
覚えてる?」

「……何を?」

「後夜祭。空けといてって言ったの」


あ……。


「……うん」


もちろん。

忘れるわけがない。


あたしが頷くと、瀬戸は嬉しそうに笑った。


「よかったー。
忘れられてたらどうしようかと思ってた」


後夜祭……。

そこであたしは瀬戸に……。