瀬戸はあの時、結衣に自分に好きな人がいることは言わない方がいいと言ってた。

その理由があたしのことが好きだから。

そんなのあたしから結衣に伝えられないでしょって……。

そういう感じの理由だったけど……。


……本当は何か別のことを気にしてた?

結衣があたしに何かする……とか?

でも……


「……そんな子じゃないのに」


結衣はそんな子じゃない、と思う自分がいる。

仲良くなったのはこのクラスになってからだから一年も経ってないけど。

でも……。


「平野」


呆れたように広里君があたしの名前を呼ぶ。


「目の前で起きてること冷静に見てみろ。
お前が思ってるようなヤツだったら、あんなことしないだろ」


あたしはいまだ瀬戸に絡んでいる結衣に目を向ける。

どこへ行くにも瀬戸にくっついてる結衣。

クラスメートの冷ややかな視線も気にせずに突っ走っていく。


「……涼に平野から手紙を渡させて失恋させるつもりだったんだろうな。
なのに、以前にも増して二人が仲良くなっていくから焦ったんだろ」


広里君は嫌悪感に溢れた目で結衣のことを見る。


「平野にとっては高橋は友達かもしれないけど。
それと同じように涼だって俺の友達だ」

「広里君……」

「高橋が故意に涼を傷つけたとしたら、俺はそれを絶対に許さないよ」


……広里君の目は真剣だった。