「面の皮が厚いって……結衣のこと?」
「他に誰がいるの。平野?」
こんなによく話す前は広里君のこと真面目な常識人だと思っていたけれど。
この人は意外と毒がある。
思わず頬をぷにっと摘むと、それを見て広里君は軽く吹き出した。
「冗談だよ」
「……分かってる。
……で?結衣の面の皮が厚いって、どういうこと?」
「そのまんま。
涼が何回断ってると思ってんの。
去年からだよ。
ようやく少し落ち着いたと思ったら、またああやって……」
広里君が小さくため息をつく。
……あたしはじっと広里君を見つめた後、少し疑問に思ったことを尋ねてみる。
「……この前のさ、瀬戸に付きまとってた女の子の話。
……あれってもしかして……」
あの時広里君は答えてくれなかったけど。
ちょっとだけ事情が分かってきた今なら……。
……広里君は少し考えた後に観念したように息を吐いた。
「そうだよ。……高橋」
ああ………やっぱり。
何となく、そんな気はしてた。
「前、涼は答えてくれなかったって言ってたけど。
……多分、平野のこと気遣ったんだろうな」
「え?」
「アイツにとっては嫌な女だけど。
平野にとっては友達なんだろ?
……だから。
アイツ、何も考えてないように見えて意外とそういうの考えてるよ」
……やっぱり、瀬戸は優しい。
本当に……。

