「瀬戸……」
慌てて瀬戸の周りを見るも、誰もいない。
抜けてきたの?
あの状況から?
いろいろな疑問点が浮かぶあたし。
「思ったより来るのが早かったな」
「当然でしょ。
俺は平野に手を出す輩には敏感なんでね」
見るからに不愉快そうな瀬戸。
そんな瀬戸を見て笑う水谷君。
「なら、もう少しそばにいた方がいいんじゃない?
前みたいにさ」
「なっ…………」
余裕そうな水谷君。
それに対して、ムカついてますオーラがムンムンの瀬戸。
「まぁ、今の瀬戸にはムリか。
モテモテだもんな」
「……ケンカ売ってる?」
え……なんかこの状況、マズイ?
瀬戸が怒っているのが目に見えて分かる。
瀬戸ってこんな風に怒るんだ……じゃなくて。
「あの、」
「じゃあ、俺そろそろ行くよ」
「え」
「早く戻らないと文句言われそうだしね」
肩をすくめながらそう言う水谷君。
この時期、男子の肩身はちょっとだけ狭い。
「じゃあね、平野。
あとついでに瀬戸も」
「あ、おい……」
瀬戸が呼び止めようとしたけれど、水谷君はそれに構わずヒラヒラと手を振って教室に戻っていってしまった。
……不機嫌な瀬戸を残して。

