遊園地から家に戻り、いつものようにりあをお風呂に入れてくれたアヤト。いつものようにご飯を作っていた私。いつものようにアヤトと私に囲まれて幸せそうに笑い合っていたりあ。本当にこれが最後だとは思ってもいなかった。

　そして、気づけば朝になっていた。
「りこ？おはよう。ちょっと散歩に行ってくる。」
「うん、行ってらっしゃい」
これがアヤトの顔を見る事ができた最後だった。もうこの家に戻ってくる事はなかった。

　アヤトが散歩に行って30分程たった。りあが泣いていたので抱っこしてテレビを見ていた。すると、かすかにほんのわずかに空耳なのかもしれないけど、トラックのクラクションの音が聞こえたような気がした。それから5分後…、家に電話がかかった。

プルルルル…♫♪プルルルル♫♪

「もしもし、一ノ瀬です。」
「りこ？俺…俺だけど…」声がおかしい事に気づいた。頭の中で悪い状況ばかりを想像してしまう。
「どうしたの！？」
「ごめん…明日、結婚式なのに俺…出れない…」
「え！？」
「ごめん…プー、プー、プー」

　これがアヤトの声を聞いた最後。結婚式に出れない？どうして？アヤトが？

　すぐに近くの病院に運ばれた。そして、私は急いで準備をして、りあを連れて病院に行った。すると集中治療室にいるアヤトの姿があった。私はすぐにりあを連れて給食着のようなものに着替えて中に入った。その時、アヤトの心臓は止まった。心音が聞こえなくなった。すると、すぐに緊急時担当の医者が駆けつけた。

　「午前10時16分…最後までずっと『りこ、りあ』と言ってらっしゃいました」
「アヤトー！！アヤトーーー！！ねえぇ…起きてよ…アヤト！！目を覚ましてよ！！」
「最後まで一生懸命生きようとしたんです。でも、出血多量の為…」

　私の頭の中は真っ白になった。どうして、アヤトが？？アヤトの手を握り締めたまま私はそのばに崩れた。もうアヤトは冷たくなっていた。

　これからどうしていけばいいの？私一人じゃ無理だよ…アヤト…アヤト…