「………うそ」
「嘘じゃないって!何でそんな嘘つくのよ、俺が」
だって、辻さんだもん。
大人で、カッコ良くて、お見合いだっていつも断ってる。
お客さんから手紙とか渡されてるのも、何度見てる。
………私に好かれて、辻さんが喜ぶはず、ないもん。
「あの、さ。あれからずっと考えてたんだけどね」
ポリポリ、ほっぺたをかきながら。
辻さんが言った。
「……………付き合おっか」
…………つきあう?
誰が、誰と?
頭の中で、辻さんが言った言葉を繰り返してみるけれど、全然理解が出来ない。
本当に真っ白で、私はポカーンとしながら辻さんを見た。
「ぶはっ、何その顔」
辻さんが、私の顔を見て吹き出した。
「…………翠ちゃんが嫌なら、もちろん止めるけど。もし良かったら、付き合わない?」
「な、んで…………?」
「何でって、……………好きだから?」
…………うそ。うそだ。
「うそ」
「だーかーら、嘘じゃないって!」
ぽたり、何かがぎゅっと握りしめた手に落ちた。
何だろう、と思っていたら、
辻さんが、私の目元に優しく手を添えた。
「もう、何で泣くの」
仕方ないなぁ、とでも言うような。
優しい優しい顔で、辻さんが笑う。
「………だって辻さん、色んな人から言い寄られてるもん」
「えー?そう?」
「っ、も、モテモテだもん」
「モテモテじゃないって」
「う、うそつき……、っ、ひっく」
「モテモテだとしてもさ、好きって言われてその気になったのは翠ちゃんだけだよ」
「……っ、ひっ、……」
ポロポロ、ポロポロ。
ワケがわからない位に、涙が出てきた。
鞄から慌ててハンカチを出して、目元を押さえる。
「…………好きだよ、翠ちゃん」
こんなの、夢だ。絶対。
「ね、翠ちゃんは?」
目の前で微笑む辻さんは、とんでもなく甘くて、優しい顔をしている。
こんなの、私の都合の良い夢を見ているだけだ。
「…………俺のこと、どう思ってるの」
………夢なら、どうか。
「……………すき、です」
どうか、醒めないで。
ずっとこのまま。甘い夢の中に居たい。
「つ、辻さんが、好きです………」
