あの日からどこか距離ができて
自分も、麻悠も他の人に
告白されることもあって。


麻悠の友達のこと。
クラスのみんなの目線。
勉強のこと。
室長のこと。
サッカーのこと。

そういうのが全部ごちゃごちゃになって
自分は
大切な人を、



傷つけたんだ。



「麻悠のこと嫌いになったわけじゃないよ。
麻悠、よく聞いて。
大好きだから...お別れしよう?」

涙が溢れた。
初めて自分から告白して
自分からさよならをした。

電話越しに聞こえる麻悠は
自分を慰める様に笑っていたけど、
無理しているんだってよくわかった。



自分なんて消えてしまえばいいと



本当に思った。



自分自身も
クラスのみんなも
麻悠さえもを


憎んだ。




いつもと同じ学校
いつもと同じ教室
いつもと同じ皆

いつもと違う、あの人。

目が赤く、瞼を腫らして
泣き疲れたような表情

無理に作った笑顔。


後期は
室長選挙に落選した。
あの日から麻悠の隣には
広翔がいた。広翔は自分と麻悠を
また隣に戻そうと頑張ってくれた。

広翔は麻悠を支えてくれた。
自分の代わりに。
麻悠が自分のせいで泣いているときは
慰めてくれた。


パートナー、を
自分と同じくらい、それ以上に
こなしてくれた。


卒業式の日まで、麻悠は。


自分が好きだった
あの笑顔で笑うことはなかった。

どこか淋しげで
目はいつも遠くを見ていた。


自分のせいで、麻悠は変わった。


そう思っていたのに


卒業式の日麻悠は泣きながら言った。


「ひろくん、5年間...麻悠なんかの
隣にいてくれてありがとう...
ひろくん...あなたに出会えてよかった」


その時やっと
広翔の言葉の意味が分かった。

「高岡の好きな麻悠の笑顔は
高岡しか知らない。高岡にしか作れない」