「ナミ!!」
突然、ケイの声が教室に響く。
なんか、すごく嬉しそうだ。
「なに?また香織と目が合った、とか?」
ケイはいちいちあたしに報告してくる。
今日は話し掛けてくれた、とか、笑顔がかわいかった、とか。
それを話してくるときのケイの顔が、あまりにも幸せそうで。
あたしは目をそらしたくなってしまうんだ。
好きな人の幸せを、素直に喜べないのはあたしだけ?
「今日は、そんなんじゃねぇんだよ!ほら、ここ、見て!」
ケイが差し出してきた自分の手。
手の甲に、伴創膏が貼ってあった。
あぁ、なんだ。
そういうことか。
なにがあったのか、一瞬で悟れる。
そしてあたしの心を、一瞬でズタズタにする。
「今日、昼休みにセンセの手伝いしてたんだよ。そしたらカッターで切っちゃってさ。俺は平気って言ったんだけど、センセが保健室行けってうるさかったから仕方なしに行ったんさ。したら保健室にちょうど香織ちゃんいてさぁ~!手当てしてもらっちった♪」
嬉しそうに、幸せそうに、話すケイ。

