レモンな初恋





 湊は少しずつあたしに顔を近づけて。


「んっ……」



 キスを、落とした。


「あ……」



 湊の離れた顔は、何故か勝ち誇っていて。


 でもあたしは恐怖しか感じなかった。



 湊に、こんな気持ちになるなんて。



 怖い、湊がとても。


 見たことのない、顔だった。



「いつまで気づかないの?ずっと架樹しか見てないのに」




 そう言うと、湊はあたしからどいた。



 湊は、口をパクパクさせるあたしをチラッと見ると、「帰るわ」と言ってあたしの家を出て行った。