「……俺の母親は、そのまま俺に気付くこともなく男の車に乗って行ってしまったんだ。
すぐに追いかけたけど、いつの間にか消えてしまった」




 泣きそうになる。


 連也くんの震える肩を見ていると。




「はっ、笑えるだろ?母親は俺よりも男を選んだ。俺を捨て、たんだ……」



「が、まんしないでっ……」



 我慢して、無理して笑わなくていいよ。


 あたしは、そっと連也くんの頭を撫でた。



 女が怖いって言ったのも、信じられないって言ったのも、お母さんのことがあったからだ。



「笑わなくてもいいの。あたしは、味方だよ……?」



 信じて、連也くん。



「……知ってる。だから、俺は架樹に言ったんだ。」



 そうだったんだ。


 連也くんは、あたしのこと信じてくれてたんだね。



「うんっ、ありがと……」



「……これは、ちょっと俺の話と混ざるんだけど」


 そう言って、連也くんはまた話し始めた。


「こうやって心を開いたのは、お前が初めてなんだ。真っ直ぐで純粋で……女は嫌い。それは今も同じ。でも、お前は……特別」


「うん」


 連也くんはゆっくりと息を吸って、こう言った。


「俺、架樹のこと……好きなんだ」