「……ふぅー、なんかあったの?」
いつもなら明るいあたしの暗い姿を見て、湊はあたしと同じくしゃがんで聞いた。
「……別に」
「……また、おばさんのこと思い出した?」
おばさんというのは、おそらくあたしのお母さんのことだ。
湊には、なんでもお見通しらしい。
「……」
なんも答えずにただ俯くあたしに、湊はまた息を吐き出して、
「そっか、そっか」
とあたしの頭をポンポンッと撫でた。
「……あたしも、早く忘れなきゃね」
「別に無理する必要ねぇーって。お母さんのこと忘れるとか、出来ないだろ?」
「……うん。」
湊の言葉に、心が温かくなっていった。
あたしのお母さんは、7年前に病気で天国へと逝ってしまった。
病気で苦しみながらも、あたしの頭を優しく撫でてくれてた手は、今でも忘れられない。
友達とケンカをしてグチグチと言っても、泣いてしまっても、優しい眼差しで聞いてくれてた。


