佑香はあたしの腕を掴んで聞いてきた。



 連也くんは自分の席で、みんなの目を気にもせずに本を読んでいた。



 なんていう本なのかな?


 面白いかな?



 ……なんて思ってる場合じゃない!



「なんにもされてないよ」



「本当?」



「本当」



 何度もしつこく訪ねてくる佑香に苦笑した。



「しつこいよ」


「だってあの地味男、いきなり果樹を引っ張ってくから。顔怖かったし。」



 あれ?


 佑香は顔まで見てたんだ。


 だったらなんで……



「みんなその顔見たから、大丈夫かなって言ってたんだよ。ほら、みんな気にしてるっぽいし。」



 佑香は少し教室を見渡した。


 真似するように、あたしも見渡した。


 確かに、あたしと連也くんをチラチラ見てるっぽいけど……


「気にしてるっていうか、睨んでるっていうか……」