レモンな初恋




 そうしたら、坂野くんは一瞬目を見開いたけど、また可愛く笑って、



「どういたしまして、果樹」


 と、言った。



「……あたし、あたしの電話番号も教えるね!!」



 あたしは坂野くんの右手を取って、自分のも書いた。




「ふふ、なんかいいな」



「んー?」



 芝生に二人で座って話す。



「なんかね、坂野くんの特別になれたみたい」



 あたしは坂野くんの方を向いて、「そんなわけないのにね」と付け足した。



 すると坂野くんは、ぼそっと何かを呟いた。



「え?」


 聞こえなくてあたしは聞き返した。


 すると坂野くんは今度は口をパクパクさせた。



「えっ」



 お、ま、え、は、な、



 そう言った気がした。